コロナと闘うサウナ施設
新型コロナウイルスが猛威を振るい、外出自粛や緊急事態宣言発動などで出かけることがはばかられ、サウナ施設に行くことが以前より難しくなってしまった。
それにともない、大都市圏を中心に営業を自粛するサウナ施設も増え、また継続して営業しているサウナ施設も来客数の減少で苦戦を強いられている。
今回、コロナと闘う温浴施設を取材しようと、神奈川県は横浜市鶴見区の「ファンタジーサウナ&スパ おふろの国」に伺ったが、おふろの国は4月17日より神奈川県からの自粛要請により休業にはいる(取材日は4月9日で営業中だった)
店の雰囲気はいつも元気で明るく、サウナーからとても人気のある「おふろの国」が、どうやってコロナと闘い、何に注意をし、そしてどのような想いで営業をしてきたのか取材した。
温浴エンターテインメントの先駆的施設の今
井上勝正や熱波女将など有名スタッフが多数在籍しており、全国のお風呂屋さんで働く女性スタッフで構成されるアイドルグループ「
OFR48
」を立ち上げ、そしてロウリュ・アウフグースのパフォーマンスを競う大会「
熱波甲子園
」を開催した。
おふろの国とはまさに温浴エンターテインメントの先駆的施設。
多くのメディアにも取り上げられ、サウナタイムの
銘店探訪記事
でも取材をさせていただいた人気施設のおふろの国が、いまコロナショック前と比較して、来客数が約半分に落ち込んでいる。それでも県の自粛要請を受け休業に踏み切るまでは、スタッフ一丸となって細心の注意を払い営業を継続していた。どのような取り組み、どのような工夫を用いて営業をしているのか。開店前から張り付き取材を行い、その実態を探った。
開店前:触れるところの徹底消毒
取材日は4月9日。この日の開店は午前11時。普段は朝の8時から開店しているが、4月17日までは時短営業を行ってる。
店が開く前の店内清掃はまさに戦場のよう。タオルとアルコールスプレーを持ったスタッフが、いたるところの消毒を徹底して行っている。
スタッフに清掃のポイントを伺うと、とにかく「人の手が触れるところはどれだけ小さいスペースでも徹底して消毒する」とのこと。
店に入る前のエレベーター内部も消毒。
下駄箱の取っ手と鍵も入念に。
なお、入り口には高い除菌効果が期待できる次亜除菌水を設置。入店の際には次亜除菌水を使った除菌が必須になる。
カウンターには飛沫感染を防ぐためのビニールカーテンが設置。
脱衣所の消毒、清掃は徹底して行われているが、特に重要なのは換気。おふろの国の脱衣所では、少し寒さを感じるほど外気を入れて換気をしている。
脱衣所入り口のドアは常時開放。換気のための空気の通り道をつくる。
なお、3時間おきにおふろの国は全館清掃を行っているが、スタッフは常にタオルとアルコールスプレーを携帯しており、手が空けば適宜清掃、消毒を義務付けられている。
浴室:大切なのは「距離」
次に、浴室で注意しているポイントを取材した。一般的にインフルエンザウイルスなどは高温多湿に弱いとよくいわれているが、新型コロナウイルスに関してはまだはっきりと分かっていないので、高温多湿の環境であっても気をぬくことができない。
まずはサウナ室に行く前の洗い場の様子。密接を防ぎ距離を保つために、ひと席飛ばしで洗い場の用意がされていた。
サウナ室も密接を防ぐためにマットとマットの隙間を空けている。なお、サウナ室に入って驚いたのはセッティング。いつもより明らかに熱い。少しでも感染リスクを下げるために、通常より温度と湿度を上げて、換気も頻繁におこなっているとのこと。
なお、サウナ室では会話が禁止されており、会話しているとスタッフが優しく(?)注意してくれる。
外気浴の椅子も間隔を空けている。外気なので密室ではないが、とにかく密接や密集のリスクを最大限減らすのが重要。
館内:いたるところに細かい感染対策
浴室以外のスペースでも対策は怠らない。館内には入り口やトイレなどに次亜除菌水を置いているが、ボディケアなどを施してくれる癒し処「ケアケア」の入り口にも次亜除菌水が置いてある。
ケアケア内は常に換気が万全。店舗内の温度や外の気候、お客さんの入り状態を見極めながら、なるべく長時間窓は開けているとのこと。
また施術ベッドのマクラのカバーは、お客さんが横になってからかける。
フットケアをするときは、セラピストとお客さんの間の飛沫感染を防ぐためにビニールカーテンを挟む。なお、ケアケアでは、お客さんもマスクしたまま施術を受けることができる。
レストランではテーブルにお箸や調味料は一切置かない。
レストランのカウンターでもビニールカーテン。お客さんと従業員、双方を守るのにビニールカーテン対策は重要とのこと。
なぜ営業を継続するのか。その理由は?
取材中、手や足が止まっているスタッフは誰もおらず、開店前の清掃後も常にスタッフは継続して消毒や清掃に勤しんでいた。
現状の集客数を聞くと、コロナショック前と比べて約半分。なぜ、このような状況に立たされても、おふろの国は営業を続けるのか。店長の林和俊氏にうかがった。
- 林店長 「営業を継続する理由は、お客さんの健康の為です。おふろの国はコロナの影響で客数が半減しましたが、回数券の利用率などは以前とほとんど変わっていません。ご近所の常連さんは変わらず来館してくれているのです。常連さんにとって、おふろ屋さんに来ることは1番の健康対策なんですよね」
たしかに…。コロナで外出自粛をする目的は、究極論でいえば自分と周りの健康のため。いうなれば自粛はあくまで健康維持のための手段にすぎない。自粛をすることにより、コロナが防げても健康が害されてしまっては意味がない。
- 林店長「我々のビジネスはあくまで半径5キロ圏内商圏。近所の常連さんがターゲットなので、きちんとインフラとしての使命を全うしようと考えています。ただ、それはあくまでコロナ対策をしっかりすぎるほどしている上での話。おふろの国は消毒や清掃はとにかく細かく徹底して行なっていますが、それ以上にお客さん同士なるべく向かい合わせない、近寄らせない対策に力をいれています。安全な場を提供するのも大事ですが、お客さんにリスクある行動をとらせない工夫をすることも施設の責任ですから」
「お客さんの健康維持のためのインフラ」その責務を全うすべく、ぎりぎりまで営業を継続していたおふろの国だが、県の要請を受け4月17日で休業する。
温浴施設が絶対に安全だとは言い切れない。サウナがコロナに対し効果的かどうかも定かではない。休業する方がいいかもしれないし、営業を継続することも大切かもしれない。正解はどこにもなく、あくまで施設側の意思に委ねられる。
ただ、今回この取材記事を通して伝えたかったことは、営業をしている施設はすべからず大変な努力をしてコロナと闘っているということ。「お客様への価値提供」と「感染リスク」の板挟みに遭いながら、それでも対策を怠らず努力をしている。そんな中での、断腸の思いの休業であったと思う。
コロナが終息したら、感謝をこめて今まで以上に温浴施設に通いたい。そう感じた取材であった。
(※4月17日以降のおふろの国の営業状況は随時変更します)