サ道年末SP放送記念 インタビューバトンリレーVol.6 作曲家とくさしけんご氏

7月クールに放送され、大反響だった「ドラマ サ道」。9月に最終回を迎えたが、その興奮冷めやまないなか2019年12月28日に年末スペシャルが放送される。 過去に「ドラマ サ道 」の出演者の方達にインタビューバトンリレーを行ったが、今回は「ドラマ サ道」の年末スペシャルを記念して、ドラマの音楽を担当し、サウナをテーマにしたアルバム「 MUSIC FOR SAUNA 」を作り出した、作曲家のとくさしけんご氏にインタビューをした。 作曲家ならではのドラマのみどころは必読!

サウナを好きになったきっかけは活字版の「サ道」

- サウナーけた どうぞよろしくお願いします!

- とくさしけんご こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

お会いできて光栄です。とくさし先生のアルバム「MUSIC FOR SAUNA」いつも愛聴させていただいてます。

- とくさしけんご 「そのように言っていただいてうれしいです」

後ほど、MUSIC FOR SAUNAの誕生秘話などお伺いさせていただきたいですが、まずはとくさし先生がサウナを好きになったきっかけを教えていただけますでしょうか。

- とくさしけんご 「もともと18歳くらいのころから健康ランドが好きだったんですよ。友達とよく健康ランドに行っておしゃべり。これがとても楽しかった。そこでなんとなくサウナも入っていて…。」

いいですね。10代の頃の、健康ランドで友達とおしゃべり。これは楽しい時間ですね。

- とくさしけんご 「その頃はまだサウナや水風呂に全然フォーカスしてなかったんですが、サウナのあとのおしゃべりってすごく弾むんですよ。友達たち誰も気づいてなかったんですけどね、きっとサウナに入ってみんな機嫌良くなっていたんですね」

知らないうちにサウナ効果がでてたんですね。

- とくさしけんご 「そうですね。とても楽しい時間でした。それがサウナを好きになった最初のきっかけでした。ちなみにその健康ランド、いまは家族で行っているんです」

ええ!そうなんですか?なんていう健康ランドですか?

- とくさしけんご 「東京最古参の健康ランドで、当時は東京健康ランドという名前でした。今はまねきの湯という名前です」

まねきの湯!サウナタイムでも口コミいただいてます!

- とくさしけんご 「あそこは子ども連れには本当にいいですよ。まねきの湯はアスレチックスペースが充実していて、そこでずっと子どもは遊んでいる、それを父が見守っている間は母がサウナ、母が戻ってきて今度は母が子どもを見守っている間は父がサウナ。これを繰り返すんです」

いいですねぇ。家族の仲が深まりそう。

- とくさしけんご 「サウナ→水風呂→子どもを見守り。という流れになるんですけど、アスレチックで子どもが喜んでいるのを見ながらととのうんですよね。これは家族全員大満足のコースなんです」

素敵!とくさし先生いいお父さんですね。18の頃に友達と行っていた健康ランドに今度は家族で来る。いいですね……。 健康ランドがとくさし先生のサウナ好きのルーツなんですね。

- とくさしけんご 「最初に好きになったきっかけはそれですが、今のようにがっつりサウナを好きになったきっかけというと、やはり水風呂に目覚めてからなので、それはタナカカツキさんとサウナに行くうちに実地レクチャーしてもらったことでしょうかね」

なんと!カツキ先生がきっかけなんですね。

- とくさしけんご 「はい。カツキさんの映像作品の音楽を作らせていただいたのが出会いでした。2007年前後ですかね。なのでやっぱり本当のきっかけは「サ道」ですね。漫画ではなく、活字版のサ道」

「イージーリスニングを更新したい」そう想い、MUSIC FOR SAUNAは生まれた。

冒頭にお話ししましたが、ぼくは「MUSIC FOR SAUNA」が大好きですし、このアルバムを愛聴しているサウナーの方はたくさんいるかと思います。これが生まれたきっかけなどあるのでしょうか。

- とくさしけんご 「サウナと水風呂のあと、休憩室でぼんやりするのが好きなんですけど、そのときになにげなくスマホとイヤホンで音楽を聴いていたんですよね。そこで、自分でプレイリストを作ったんです」

とくさし先生のプレイリスト、すごい気になります……。

- とくさしけんご 「17時間のプレイリストとかありますよ。クラシック音楽だけでまとめてみたりとか。それでいろいろ聴いていくと思うことがあるんです。みんな、1曲が短いって」

たしかに……。だいたい1曲3分から4分ですもんね。

- とくさしけんご 「そうそう。あとね、どの曲も盛り上がりすぎるんです。短くてぶわっと盛り上がる、これをサウナの後に3分スパンで繰り返されるとキツいんです……」

わかります……。ちょっとがちゃがちゃしちゃいますね。

- とくさしけんご 「もっとフラットな……、時間の地平線を眺めるような音像がほしいな、と思ったんですよ。でもかといってヒーリング音楽などになると、ちょっと生意気なことを言いますが、音自体に「ヒーリング音楽です!」というラベリングがありすぎてつらい」

たしかに!「さぁリラックスしろ!」って感じがしちゃうんですよね。

- とくさしけんご 「そうなんです。スピるぞ〜!って気合がつらい……。なので、時間の地平線を眺めるようなサウンドでありつつ、既存のヒーリング音楽のラベリングからは逃れるような音楽を作りたい、と思ったんです。あくまで自分用に」

欲しいと思った音楽を自分で作れる。素敵ですね……。

- とくさしけんご 「癒し系の「癒し」って言葉がもう耐用年数を過ぎていると思うんですよ。ここが一番アップデートされるべきところなんじゃないかな、と。ヒーリングも癒しも、音楽をやっている身からするといちばんカッコ悪い。でも、ということは、いちばん可能性があるなって思うんです。なので、大きくくくると、「イージーリスニング」を更新したいな、と。新しいイージーリスニングを作りたいな、とサウナの休憩室で、心で叫んだんですよね。きっとととのってたんでしょうね」

ととのってますね。まさにサウナで生まれた想い……。

- とくさしけんご 「そう、それで作り始めたんです。最初は15分くらいの感じで。ところが創り始めてみたら、ものすごい広がりを感じたんですよね」

そんな誕生秘話があったんですね……。

MUSIC FOR SAUNAに隠された秘密……?

いちばん最初に出したMUSIC FOR SAUNA、ぼくはこれを聴くとき、必ず1曲目から順番に聴くようにしています。

- とくさしけんご 「ありがとうございます。途中から聴きたい方のために、便宜上トラックを分けていますが、制作上はアルバム1枚の時間、50分で1曲になっているんです」

お!やっぱりそうなんですね。なんだか曲の流れにストーリーを感じるんですよ。

- とくさしけんご 「それはうれしい感想です。メロディの流れが50分通して関連性があるように構築していて、循環主題っていうんですけど、クラシックの手法をつかってるんです」

ぼくの周りにもMUSIC FOR SAUNAが好きなサウナーたくさんいますが、とくに5曲目の中盤部分が好きな方多いですね。「ドラマ サ道」のマルシンスパの回で、荒川良々さんが マグ万平 さんのアウフグースを泣きながら受けていた時に流れていたパートです。あそこのパート、なんだか世界が開けていくような感じがしてすごい好きなんです。

- とくさしけんご 「うれしい感想です。ちなみにちょっとマニアックなことをいうと、最初のMUSIC FOR SAUNAの1曲目の最初の1分に、その後のメロディがほぼすべて入ってるんです」

え!その1分間にメロディが凝縮されてるんですか!?

- とくさしけんご 「41秒くらいからが聞き取りやすいかもですね。さきほどけたさんが言った5曲目のパートも入ってますよ。こんな感じで…」

たしかに……。すごいしかけを施したんですね……。

- とくさしけんご 「そうなんです。圧縮された最初の1分が、ものすごく遠くまでひたすら広がっていく、という音楽です。これは1作目のMUSIC FOR SAUNAから、2作目のQUIET NIGHT、3作目のREPETITIONへとアルバムをまたいで繋がっていきます」

トラックだけではなく、アルバムまでまたいでMUSIC FOR SAUNAの世界が広がっていくんですね……。ぼくは自宅で音楽をかけるとき、MUSIC FOR SAUNAを朝に、REPETITIONを日中に、QUIET NIGHTを夜にかけています。

- とくさしけんご 「うれしい聴き方ありがとうございます。MUSIC FOR SAUNAが、時間や季節を巡るような感じで聴いてもらえるとうれしいです」

作曲家ならではの「ドラマ サ道」のみどころは……?

さいごに、サ道のみどころを教えていただけますでしょうか。

- とくさしけんご 「ドラマの音楽を担当させていただいているので、音関係のことを、しかも大声でいいたいんですが……、ドラマ内での音の扱いが、ものすごくデリケートなんですよ」

音の扱いがデリケート?

- とくさしけんご 「はい。つまり、監督、音響さん、プロデューサーさんの、編集時の気遣いなんです」

???

- とくさしけんご 「映像の中の音って、3つあるんですね。①セリフ ②その現場の音 ③後から入れる効果音や音楽」

たしかに…。その3つですね。

- とくさしけんご 「この3つ、同時にならすと派手になるんです。たとえば、サスペンスドラマで、

①セリフ「逃げろ〜!」
②現場の音「すごい足音」
③音楽「めっちゃ派手な音楽」

みたいな。3つの音で同じことを言うんです。そうすると、まぁ派手に盛り上がります」

おお……、いまめっちゃサスペンスドラマが流れてました。たしかに、盛り上がり時って、一気にいろんな音が聴こえますね。

- とくさしけんご 「そうなんです。でも「ドラマ サ道」では、この3つの音を、ほぼ同時には鳴らさないんです。浴室のカットは現場の音のみ。しみじみしているナカちゃんさんの顔のときは音楽のみ。サウナ北欧で3人がトークしているときはセリフのみ」

いま思い返すとたしかに!

- とくさしけんご 「なので、音楽が入ったとき、すごく気持ちいいんです」

ドラマの中での、受付の時の音楽、サウナあがったときの音楽、食堂での音楽、鮮明に覚えています。

- とくさしけんご 「ありがとうございます。でもこれは、編集のときに音を当てていく段階で、かなり意識的でないとできないんです。そのセクションはわたしではなく、監督や音響さんやプロデューサーさんなわけです。そして、そんな音の隙間がたくさんある作品をテレビでやっている、これはすごいことなんです」

とてつもないこだわりですね……。

- とくさしけんご 「テレビってどうしても派手目になりますよね。そうしないといけないみたいなところがあります。でも、サ道は逆をいっているんです。サ道の音楽を作っている段階で、わたしが変に忖度して、少し派手目の音楽を制作側に提出しても、「いつものとくさしさんのアルバムみたいな質感のままでお願いします」って言われるんです。うれしいですよね」

これはすごいみどころですね……。このインタビュー、スペシャル始まる前に絶対読んで欲しいですね……。

- とくさしけんご 「はい!ぜひ読んで欲しい!あと読んでからぜひDVDやBlu-rayなどで観直してほしいです。音楽が、というよりも、ドラマ全体の音の抜き差しのデリケートさ。ここはぜひ注目していただきたいです」

とくさしけんご氏が語る「ドラマ サ道」のみどころ。まさに作曲家ならではの着眼点だった。サ道を観終わった後、不思議な余韻に浸れるのは、物語や役者たちの影響もあるが、音楽が織りなす世界観が、あるいはそうさせているのかもしれない。 サ道年末スペシャル、ぜひ「音」にも注目して、楽しんで観てほしい。
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