トップマネジャーインタビュー2 湘南ひらつか太古の湯グリーンサウナ「加川社長」

サウナ施設の責任者の方に、どんな想い、どんな戦略、どんなこだわりをもって施設の運営をしているのか、どんどん切り込んでインタビューしていくこの企画。
第2回目は、神奈川県平塚市にある「湘南ひらつか太古の湯グリーンサウナ」の加川社長。全国のサウナーに愛されるこの施設は、2020年5月に惜しくも閉店となる。
世界のスタイルを独自に取り入れたこの施設の歴史と戦略、そして閉店に至った想いと社長の夢を伺った。

湘南ひらつか太古の湯グリーンサウナってこんなトコ

インタビューの本題に入る前に、太古の湯グリーンサウナについて簡単にご紹介。
グリーンサウナは、神奈川県は平塚市JR平塚駅西口から徒歩2分のところにある老舗温浴施設。店を構えて49年。一度改装をし、いまの施設になって35年とかなりの歴史が刻まれている。地域に密着した老舗施設だが ロウリュ、アウフグース は毎日行われ、ヴィヒタロウリュなどのイベント、ガッシングシャワーなどの独自の仕掛けが満載の人気施設だ。さらには2年ほど前からテントサウナを行うようになり、露天スペースでは喫煙もアルコールもOKというまさに海外のような自由さもある。こういった取り組みが話題になり、サウナをテーマにした連続ドラマ「 ドラマ サ道 」第5話のロケ地にもなった。
詳しくはこちらの記事をチェック。

初めてのととのいは、大阪のあの有名店

今日はよろしくお願いします! - サウナーけた

はい。よろしくお願いします - 加川社長

早速ですが、まずはぜひ加川社長ご自身のお話を聞かせていただければと思います。どういう経緯でグリーンサウナの社長になられたのでしょうか。

- 加川社長 「グリーンサウナは先代の社長、わたしの父親が建てた施設で、わたしは2代目となります。わたしは生まれも育ちも平塚なんですが、大学行ってから10年間ほど、平塚を離れ海外で働いていたんですよ」

海外はどちらにいらっしゃったんですか?

- 加川社長 「アメリカです。アメリカの大学院にいて、卒業後はホテルで働いていました」

以前、こちらで フィンランドフェス というイベントをやらせていただいた時、フィンランドの方がたくさん来られましたが、社長が流暢に英語を話しているのをみてカッコいいなと思いました

- 加川社長 「今はだいぶ忘れましたけどねw」

なぜ海外に行こうと思われたのですか?

- 加川社長 「日本の大学生時代に社交ダンスをしていて、そこで今の奥さんと出会ったんです。最初は社交ダンスのプロのなろうと思ってました。ただ、社交ダンスで食べていくのはなかなか難しいんですよね…。そこでプロの道を断念したときに、親父に海外に行ってこいと勧められたんです。それから単身海外に行きましたね。その頃はサウナの仕事など全く意識してませんでした」

そんな中、なぜ家業を継ごうと思われたのでしょうか。

- 加川社長 「きっかけはとくに無かったのですが、30歳になっていろいろ人生を考えることになり…。うちは代々平塚で商売をしてきたので、長男としてそれを途切らせず、墓を守っていくためにも親父の事業を継ごうと考えました。そのタイミングでアメリカから帰国し、グリーンサウナに入りました。ただ、日本に戻ってきても、サウナのことや温浴のことは全くわからなかったので、船井総合研究所の温浴チームの勉強会に入ったんです。ここで多くの業界諸先輩方と知り合い、1年ほど必死に勉強をして…。この頃からですかね、本格的にサウナを学んでいったのは。このとき、今はもう閉店しましたが、大阪なんばにある「 ニュージャパンスパプラザ 」というところに視察に行ったんです。そこで初めてタオルで仰ぐスタイルのロウリュを受けました。その後水風呂に入り、外気浴をしていると、気持ちよくて脳天がぐわんぐわんしてきたんですよね。いわゆるあれが、初ととのい、ってやつでしたね」

競合対策のヒントは「海外の文化」

大阪の名店、ニュージャパンスパプラザが加川社長の初ととのいなんですね。これはいつ頃の話でしょうか?

- 加川社長 「2000年代最初くらいですかね。あの頃、日本は温浴ブームで、グリーンサウナの近隣に一気にスーパー銭湯などの温浴施設が出来たんですよ。当時は温泉がとにかく人気だったので、綺麗で豊富な種類のお風呂があるスーパー銭湯などに対し、サウナがメインのグリーンサウナはけっこう打撃をくらったんです。料金を見直したりいろいろ対策をとりましたが、正直なかなかうまくいかなかったんですね。売上が下がっていく一方でいろいろ悩んでました。そんな時、わたしはサウナ・スパ協会に加盟していたのですが、海外視察研修があったんです。わたしは海外生活経験があり、そもそも海外が大好きだったので、喜んでその視察研修に行ってきました。当時行ったのはヨーロッパ。ドイツで行われた温浴の世界会議に出席したんです。そして、いくつかドイツの大型施設を見て、とても感動したんです。ある施設では大きな水車があって、その水車の桶に水が入っており、桶に付いているひもを引くとガシャーって水が落ちてきたんです。それがとても面白くて…。それをヒントに造ったのが、グリーンサウナのガッシングシャワーです」

あのガッシングシャワーにはそんなエピソードがあったんですね。

- 加川社長 「また、その視察旅行の時、ドイツ流のアウフグースを初めて受けたのですが、すごい迫力でしたよ。そしてニュージャパンスパプラザでのロウリュも参考にして、関東でいち早くアウフグースをグリーンサウナに取り入れました」

日本の温浴ブームに対し、世界の温浴スタイルで対抗していったんですね。

- 加川社長 「はい。自分のつよみをいかして、海外の色味をつけていきました。当時、グリーンサウナは改装を終えて15年。施設も少し古くなってきた中、近隣の新しくきらびやかな施設に対し設備力では勝てないんですよね。だから別のもので対抗しようと考えました」

海外の施設と日本の施設、違いはどういったところにあるのでしょうか。

- 加川社長 「固定概念の無さ、ですかね。日本の施設はかなりきちんとしていて、大きなハコを作り、たくさんの種類のお風呂を用意し、仮眠室やリクライニングチェアがあって。と大まかな形は決まっていますが、海外はそれこそ電話ボックスさえサウナにしてしまったりととても自由なんです。サウナは部屋さえあればどこでもできるという考えで、固定概念にとらわれない、ということが大きな違いかもしれませんね」

たしかに。日本はとてもきっちりしていて、まずは形を整えるところから始まりますね。それゆえ、衛生面や安全面で安心という良さもあるかと思いますが。

- 加川社長 「はい。日本のサウナは温度、湿度、ロウリュの時間、きっちり管理されており、そしてそれはとても大切なことです。しかし海外のサウナは、温度計も湿度計も時計すらも無いところが多いです。サウナで気持ちよくなることが目的なので、突き詰めるともう温度とか湿度とかどうでもよくなっちゃうんでしょうね」

たしかに…。サウナに没頭すると、時間感覚とか無くなってきちゃいますもんね…。

- 加川社長 「ただ、海外の人たちからすると日本の施設は絶賛されているんです。きちんと管理されており、きめ細かいサービスが行き届いていると」

まさにグリーンサウナは、きめ細かい日本の施設と、大らかな海外の施設の融合体ということですね。

ワールドワイドなグリーンサウナ

きめ細かくて大らか、となると、やはりグリーンサウナのテントサウナをイメージしてしまいます。毎回スタッフの方が薪の補充、テント内の清掃、お客さんの案内などきめ細かく行い、それでいて中はめっちゃ熱く、露天ではタバコも吸えるしビールも飲める大らかさ。

- 加川社長 「テントサウナをしっかり楽しんでもらうためには、あのスタッフ常駐のオペレーションでないと、火力、清潔さ、香りを保てないんです。運営は大変ですが、それゆえに利用者の方達はとても喜んでくれます」

グリーンサウナのテントサウナは本当に大好きです。他に、世界の温浴文化を取り入れたポイントを教えていただけますでしょうか。

- 加川社長 「まずは先ほど話したロウリュですね。世界のロウリュ、アウフグースを見てきましたが、ドイツがやはり一番だと思います。体格の大きな方が、アクロバティックでパワーのある風を送ってきます」

やはりドイツですか!ぼくもアウフグースをやる身なので、本場ドイツのアウフグースを受けてみたいです!

- 加川社長 「世界でも各国のロウリュ、アウフグーススタイルの情報共有は盛んなんです。ドイツのアウフグース、フィンランドのセルフ型のロウリュ、ロシアやバルト三国(ラトビア、エストニア、リトアニア)の ヴィヒタ を使った ウィスキング 。この辺りの文化交流は温浴の世界会議でも盛んに行われています」

まさに世界でみても、今どんどん最先端の温浴研究がなされているのですね。それらをグリーンサウナはすぐに取り入れる。

- 加川社長 「はい。この世界の温浴スタイルを取り入れるという点で、ターニングポイントになったのは、2012年頃、北極圏のサウナに行って「ランバスティング」というのを体験しに行ったことです」

ランバスティング?

- 加川社長 「たたく、とか、なぐる、という意味をもった言葉なんですが、ヴィヒタを使ってランバスティングする、いわゆるウィスキングですね。それを見に行ったんです。ここで体験したウィスキングがとても良かったので、どうやって日本に持ち帰るべきか、とても考えました。そこで、ヴィヒタを仕入れてグリーンサウナのサウナ室に置いたんです。自由に使ってください、と書いて。ただ、最初は全く使われなかったんですよ」

まだ当初は今ほどサウナが注目されてなかったと思うので、ヴィヒタを見てもどう使ったらいいかわからなかったんでしょうね…。

- 加川社長 「その後、2014年頃にバルト三国に行きました。その時の温浴世界会議がもうすごくて…。ヴィヒタの作り方や、各国のウィスキングの実演などが行われ、それがきっかけで週一でグリーンサウナでもヴィヒタを使ったウィスキングを行うようになったんです」

ヴィヒタを使ったウィスキング、関東で行ったのはグリーンサウナが初めてではないでしょうか。

- 加川社長 「そうですね。いろいろ試行錯誤しましたが、この取り組みが、グリーンサウナが世界のスタイルを取り入れた大きなターニングポイントになったと思います」

ロシアのテントサウナ、フィンランドの自由なスタイル、ドイツのアウフグースとガッシングシャワー、バルト三国でのウィスキング、そして日本の天然温泉。まさにワールドワイドなグリーンサウナですね。

加川社長の想いと夢と情熱はついえない

そんな素敵で大好きなグリーンサウナですが、惜しくも5月で閉館となりますね…。

- 加川社長 「今回の決断について、本当にいろいろ考えました。銀行から借り入れをして施設を建て直そうか。跡地をマンションにしてそのいくつかのフロアを借りて営業しようか。本当にたくさん悩みました。ただ、やはり施設の老朽化が限界だったんですよね…。苦渋の決断ではありますが、閉めることを決めたんです」

また新しいサウナ施設をつくる、ということはお考えですか?

- 加川社長 「つくりたいと思っています。今までの概念にとらわれない新しいサウナ施設をつくり、新天地でがんばりたいと思っています。その際、できれば今のグリーンサウナのメンバーと一緒にやりたいなと思っています」

ぜひ、社長の夢を聞かせてもらえないでしょうか。
社長が思う理想のサウナって、どういったものですか?

- 加川社長 「そうですね…。いきつくところは、サウナによっていろいろなことを忘れられる、自然や地域と一体化するようなものですかね。なので、都市型ではなく自然に囲まれた、こんなところにサウナがあったらいいな、と思えるような場所を選びたいですね」

自然と一体化、となると場所選びはものすごく重要ですね…。

- 加川社長 「そうですね。場所はいまいろいろ見に行ってます。火おこししたりすると煙が出るので、それが可能なところは限られてしまいますからね…」

場所をもういくつか見られているんですね!
火おこし、というと、サウナの熱源は薪にするおつもりですか?

- 加川社長 「はい。薪は必須です。薪を使うとなると、市街地ではテントサウナしかほぼ無理なんですよね。なので場所は確実に市街地から離れると思います」

おお…、なぜそこまで薪にこだわるのですか?

- 加川社長 「だって、全然違うと思いませんか?」

たしかに…、全然違いますね。

- 加川社長 「電気やガスの熱源と、薪の熱源とでは全然違います。焼き鳥だって、ガスバーナーで焼くのと、炭火焼で焼くのと味が違いますよね?そういうことだと思うんですよ」

おお!めっちゃわかりやすい!

- 加川社長 「うちのあのテントサウナですが、あれは2年ほど前にフィンランドの展示会で偶然見つけたものなんですが、あそこにサウナの基本が本当に凝縮されています。こんなに評判になるとは思いもしませんでしたが…」

その「凝縮されているサウナの基本」でもっとも重要なのが、熱源である薪なんですね。

- 加川社長 「はい、そうです。なので薪は必須です。ただグリーンサウナは、テントサウナだから薪が使えたわけであって、日本の消防法などを考えると市街地の施設で薪を使うのはかなり難しいんですよね…。なので「薪が使えるサウナがつくれる場所」ここから探します」

本当に楽しみです。社長にプレッシャーをかけてしまい恐縮ですが、社長の夢のサウナ施設、完成をみんな待っていると思います。

- 加川社長 「ありがとうございます。これだけは言っておきたいのですが、今回グリーンサウナは閉めることになりますが、わたしの想いや夢や情熱が消えるわけではありません」

地域に愛される老舗温浴施設は、日本にとどまらず世界の温浴文化を積極的に取り入れる、まさにワールドワイドな温浴施設だった。そんな愛する太古の湯グリーンサウナが5月に閉店となる。だけど、加川社長の夢はついえない。社長の夢の施設が、いつかどこかで開店することを心から楽しみに待っている。

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