サウナとヴィヒタ

ロケーションのいいアウトドアサウナなどではもちろん、最近では都心のサウナ施設でもよく見かける「ヴィヒタ」
今では当たり前のように扱われているサウナの代表的なアイテムだが、ヴィヒタとはいったいどのような効果があり、どのように使うのが正しいのか。
今だからこそやるべきヴィヒタの徹底解明をしていきたい。

ヴィヒタとは

まず、そもそもヴィヒタとはなんなのか。
ヴィヒタとは、一言で言うと、白樺(しらかば)の葉のついた小枝を束ねたもの。
ひと束はだいたい40本ほどで作られており、枝の根本をくくり扇のような形に整えられている。
フィンランドやバルト三国(フィンランドの南に位置する3つの国。エストニア、ラトビア、リトアニア)などの北欧地域では、ヴィヒタはサウナのマストアイテムのようなポジションで、サウナに入る人たちは当たり前のように使いこなしている。
ヴィヒタをサウナ室に持ち込めば、あの独特の芳醇な香りが充満し、まるで深い森の中にいるような感覚に陥るだろう。

では、ヴィヒタの使い方とはどういう方法があるのか。
また、ヴィヒタにはどのような効果があり、いいヴィヒタ、悪いヴィヒタにはどんな違いがあるのか。
ヴィヒタを扱う専門ブランド「ヴィヒタジャパン」の代表、諸星亮輔氏に取材した。

ヴィヒタの使い方

最初に伺ったのは「ヴィヒタの使い方」
最近はサウナ施設のみならず、個人でもヴィヒタを持っている人が非常に多く、さまざまな使い方がある。
ではヴィヒタはどういう使い方があるのか。諸星氏が教えてくれた使い方は主に3つ。

ウィスキングで使う

ひとつめはなんといってもこれ。ヴィヒタの代表的な使い方。
ウィスキング とは、サウナ室の中でお客さんにヴィヒタを使って叩く、扇ぐ、押し付けるなどの技術を組み合わせて行うリトリートサービス。
最近ではさまざまな施設で、ウィスキング専用のサウナ室が誕生している。

アウフグースで使う

これはかなり贅沢なヴィヒタの使い方。
アウフグース とは、熱したサウナストーンにアロマ水などをかけて蒸気を発生させ、その蒸気をタオルを使って扇ぐパフォーマンス。
一般的にはアロマ水を使って蒸気を発生させるが、サウナストーンの上からヴィヒタに直接水をかけ、ヴィヒタから滴る水で蒸気を発生させる方法もある。
精製されたアロマではなく、生のヴィヒタをつたい立ちのぼる蒸気は、香りがとても新鮮で、またオイルを使っていないので肌へのあたりも心地いい。

観賞用に飾る

ウィスキング、アウフグースともに施術者、演者が使うやり方だが、この観賞用はだれでも使うことができる。
自宅のリビングや玄関、風呂場、車内、さらには仕事場などにインテリアとして飾る。
ほとんどの観葉植物は植木鉢などを使って「置く」ことが基本だが、ヴィヒタは基本的に「吊るす」ことになるので、スペースを有効活用したり、部屋の雰囲気をボタニックなものにできたりする。

ヴィヒタの効果

ヴィヒタにさまざまな使い方があるのはわかったが、ではヴィヒタを使うことによってどのような効果が期待できるのか。
諸星氏に伺うと、主な効果は3つあるとのこと。

血行促進

そもそもサウナ浴は、身体が温まりながらもお風呂のように水圧がかからず、かつ身体を動かすわけでもないのでスポーツのようにエネルギーも消費せず、日常生活の中で極めて効率的な血行促進が期待できる。
そこにヴィヒタを介して身体を叩いたりするので、直接的な刺激が伝わりさらに血行が促進される。
血行が促進される環境の中で、血行が促進される行為を行うのだから、そりゃあ血行は促進されるだろう。
なお、血行が促進されると、栄養素を早く血液にのせて体内に送り、また老廃物も血液にのせて排出される。体調改善はとても期待できることになる。

洗浄効果

ヴィヒタの葉には「サポニン」という成分が潤沢に含まれている。サポ、とはラテン語で石鹸を意味しており、文字通りサポニンは固形石鹸と同じ成分である。
サウナ室で身体をヴィヒタで叩く、という行為はいうなれば薄い石鹸で身体を叩いているようなもので、かなりの洗浄効果が期待できる。

リラックス効果

さきほどの血行促進と洗浄効果は、あくまでサウナ室内でヴィヒタを使った場合の効果。
では、普段使いである「観賞用」の場合だとどのような効果が期待できるのか。諸星氏曰く「リラックス効果」が期待できるとのこと。
理由は、ヴィヒタは本来サウナ室で使われるのが一般的だが、ヴィヒタをサウナ室に持ち込んだ時のあの深い森の香り、あれと同じ香りが室内でも漂うと、まるでサウナ室にいるような感覚になり、いわゆるプルースト効果(特定のにおいや香りが、それに結びつく記憶や感情を想起させる現象)によりリラックス効果が期待できる。
ゆえに、ヴィヒタはとにかく香りが命になるとのこと。

いいヴィヒタを選ぶために

ヴィヒタの使い方と効果はおおむね理解できた。総じて言えることは「身体のために使うアイテム」ということ。
ゆえに、もちろんだが「いいヴィヒタ」を使いたい。では、「いいヴィヒタ」は具体的にどのような条件が必要なのか。諸星氏いわく4つある。

原産国

まずはヴィヒタ、いうなればその元となる白樺がどこで生息しているか。これがものすごく大事。
結論から言うと、いいヴィヒタの原産国は「フィンランド」もしくは「ラトビア」がベスト。
理由は上半球であるから。フィンランドもラトビアも、夏は10℃ほど、冬はマイナス30℃ほどまで下がる。そしてたとえ冬のマイナス30℃であっても、日光はしっかりと白樺まで届く。これが白樺を芳醇に育てる一番の気候とのこと。
ちなみに国産の白樺はいかがか聞いてみたが、決して悪い訳ではないが、上記の条件と比較すると、日本の白樺は長野や北海道のような地域であっても夏が北欧と比較すると圧倒的に暑いので、葉の成長速度が早すぎて、結果香りがとんだヴィヒタが出来上がってしまう。

葉の量

つづいての条件は葉の量。これは容易に想像できるが、葉の少ないヴィヒタは香りも薄いし見た目も貧相に見えるし、なによりサウナ室で叩かれたらとても痛い。
いいヴィヒタはなるべく細い枝を束ねており、葉も潤沢な量でありながらもしっかり剪定しているとのこと。

鮮度

何度も言ってしまって恐縮だが、ヴィヒタは香りが命。その香りをつくるのは原産国であり葉の量でもあり、そしてなにより鮮度が大事。
たまに茶色く変色しているヴィヒタを見るが、こうなってしまっては香りもとんでしまっている。
鮮度を保つポイントは2つ。1つはヴィヒタを作っているあいだにいかに葉を触らないか。そして2つめが、いかに購入するヴィヒタ販売店がたくさん出荷し回転が早いか。
ヴィヒタの販売店を選ぶ際は、なるべくサウナ施設にたくさん卸している販売店を選ぶと新鮮なヴィヒタを手に入れやすい。
逆に、ECサイトなどで施設が購入するのではなく一般利用専門で扱う販売店だと出荷数が少ないので鮮度に影響が出やすい。

最後はヴィヒタのかたち。観賞用で使う場合は、ヴィヒタを吊るしたときに、いかに綺麗に真っ直ぐ吊るされるか、が重要。
綺麗に吊るされるか否かは、ヴィヒタをくくっている紐のところを見ればわかる。固くしっかり隙間なく結ばれていれば綺麗に吊るせるし、またサウナ室で叩いたりするときにヴィヒタが分解されづらい。

ちなみに、ヴィヒタジャパンの諸星社長は、このヴィヒタのくくりの強さにものすごいこだわりがあり、ヴィヒタが分解されず綺麗に飾れるようにと、ものすごい力でヴィヒタをくくる。
そのせいか、小指が紐をひっかける形に変形してしまったよう……。

また、ヴィヒタの持ち手の末端に、写真のような切り込みが入っているとなお良い。
理由は、吊るした時の形が綺麗な扇型になるのと、ヴィヒタを持った時に、末端の枝の端が手に刺さることがないとのこと。
ここまで気の利いた工程を踏んでいるヴィヒタは、まず間違いなくいいヴィヒタだろう。

ヴィヒタの使い方から効果、いいヴィヒタの条件など、普段なんとなく使っていたヴィヒタのいろんな事実がかなり明らかになった。
サウナ施設の方が、ご自身のサウナ施設をよりいいものにするためにヴィヒタを活用するのはもちろん、個人としてもとても楽しく使えそう。
取材に協力してくださった諸星亮輔氏が手がけるブランド「ヴィヒタジャパン」。いろんな施設でヴィヒタジャパンのヴィヒタは頻繁に見かける。
個人用としても、 こちらのサイト から購入できるので、ぜひこれを機会に素敵なヴィヒタライフを送ってみてほしい。

サウナのサブスクリプションサイト「サウナタイムパス」