この施設は罠だらけ!トップマネジャーインタビュー1 錦糸町ニューウイング「吉田支配人」
「サウナタイムで、施設の支配人インタビューがみたい」サウナタイムユーザーからこのような要望をいただき実現したこの企画。施設の責任者が、どのような想い、こだわりをもって施設の運営をしているのか、そこにどんどん切り込んで行く。第一回目は、サウナーから絶大な支持を得ている、 錦糸町ニューウイング の吉田支配人。 ニューウイング のあのとてつもない居心地の良さ。ついつい長居していろんなものを飲み食いしてしまう感覚。あれには吉田支配人の緻密な戦略と「罠」があった!
人は明るいところと、水のあるところに集まる
- 吉田支配人 よろしくお願いします
- 吉田支配人 「それはうれしいですね。最近は本当にお客さんが増えました」
- 吉田支配人 「ニューウイングに来て15年、支配人になって7年ですね。もともとここは「ウイング」って名前の施設だったんですよ。それが「ニューウイング」に変わったのが15年前。そのタイミングでここに来ました」
- 吉田支配人 「青山の山王病院で働いていました。けっこう芸能人が来る病院でしたよ。その前は東京温泉という温浴施設にいました。温浴関係がものすごく好きだった訳ではないんですが、今ではすっかり休みの日も勉強のためにいろんな施設に行くようになりました」
- 吉田支配人 「ライティングです。」
- 吉田支配人 「はい、そうです。どこを明るくしているのか。それで施設がどこに人が集まって欲しいのかがわかります。人は明るいところと水があるところに集まるんですよ。他の施設に行った時に、そこを注意深くみれば施設の意図がわかります」
- 吉田支配人 「うちもそこはとてもこだわっています。全フロア、仮眠室などを除いては、暗いところがないように心がけてます。浴室もレストランも全て明るい。暗いところに人は来ないですからね」
秩序を守ってもらうためにしたことは、無秩序の場所をつくること
- 吉田支配人 「導線と秩序ですね」
- 吉田支配人 「ここは錦糸町ですから。いろんなお客さんが来ます。とくにうちは、広くてフロアもたくさんあるから荒れるんですよね。以前の4階フロアは、いまのような漫画スペースではなく、リクライニングとかきちんときれいに並べてたんですよ。すると、きっちりすればするほど、錦糸町の人たちはそのルールから逃げてしまってとにかく無秩序になりました。廊下で新聞を読んでる人。リクライニングじゃなくて地べたで寝る人。そこら中でタバコを吸う人」
- 吉田支配人 「おもいきり無秩序な場所を作ったんですよ。それが今の4階の漫画スペースです。もう自由にやってくれと。寝ころがろうがタバコを吸おうが椅子に座ろうが漫画読もうがなんでもやってくれ。そうすると、全ての無秩序があそこに集結したんですよ。結果、廊下で新聞を読む人や地べたで寝る人はだれもいなくなった」
- 吉田支配人 「そうです。抑えつけるじゃだめなんです。解放してあげるんです。ルールを守れって言ったらだれも守らないんです。温浴施設はリラックスしに来ているんですから、施設のルールで縛りすぎるとよくありません。だからあのスペースを無秩序にしたのは大成功でした。ただ、細かいケアはしています。あの漫画スペース。寝転びタバコとか全然大丈夫なんですが、置いてある備品はすべて燃えないものなんですよ。だから安心して無秩序でいることができる」
4階と違って、5階の雰囲気は秩序の保たれたスペースにした
- 吉田支配人 「そこなんです。サウナーはビジネスパーソンも多いし、もともとルールをきちんと守りたいと思う人もたくさんいる。タバコを吸わない人もいますしね」
- 吉田支配人 「5階に行ってもらうようにしました。4階の改革がうまくいくと、お客さんが4階に集中しちゃったんですよね。施設の運営として、一か所に人を集中させるのはよくないんです。混んでる印象がつくし、ゆっくりできないですし。そこで4階の雰囲気とは違う人を、5階に動かしたかった。だから5階はコワーキングスペースがあったり、きちんとクッションやマットが並んでいたり、ちょっと仕事などで疲れたらゲームができたりと、4階とは全然違う秩序が保たれたフロアにしたんです」
- 吉田支配人 「でも最初はだれも5階に行ってくれなかったんですよ。いろんなものを置いたり、明るく綺麗にしても人が来なかった」
- 吉田支配人 「水を起きました。飲み水です。ほら、ひとは明るいところと水のある場所に集まるから」
お客さんの最初の目的はサウナ。だけど最終的には違うことをしている
- 吉田支配人 「そうです。施設はすごい面白いんですよ。人にどうやって動いてもらうか。ある意味、どうコントロールするか。ただ単にどこそこになにがあります、じゃダメなんです。3階に、禁煙のレストランが通路の奥まったところにあるんですが、以前は誰もその存在に気づいてもらえなかった。「禁煙レストランあります」って書いてもそれでも気づいてもらえなかった。だから禁煙レストランはいつもガラガラだったんです」
- 吉田支配人 「レトロな瓶タイプの自販機を置いたんですよ。そうすると、気になって見にくる人がいる。そこで初めて、ここが禁煙レストランってことに気づくんですよね」
- 吉田支配人 「そうです。人を動かすもの、人が触りたくなるようなものを置けば人は動くんです。なので、お客さんが最初の目的と違うことを最終的に行っていると、ヨシッてなりますね」
- 吉田支配人 「お客さんの最初の目的はサウナじゃないですか。ただ、最終的には、食事をしている、漫画を読んでいる、ゲームをしている、仕事をしている。こうやってサウナ以外のことが目的になっていると、滞在時間も増えてその間の飲食の売り上げも上がります」
- 吉田支配人 「サウナがいいのはあたりまえにしないといけないんです。みんなそれを目的に来てくれているから。温度、湿度、水風呂の状態、浴室の状態、衛生面、徹底して管理しています」
施設に来てもらうためのサウナと温浴。そこからの努力は導線と秩序
- 吉田支配人 「それはもう、あたりまえなんです。サウナや温浴にこだわるのはあたりまえ。いいものを提供したいと思うのはあたりまえで、そこがないと、そもそもこの店に来てくれないですから」
- 吉田支配人 「あたりまえです。基本をやりつつ飽きない話題性をつくる。それもあたりまえのことなんです。そもそも施設側が飽きるので、利用者側はもっと早い段階で飽きてるかもしれません。うちの2階の温浴スペースは常にいいものと新しいものを提供する。だからお客さんが飽きずに来てくれる。その基本があった上で、その後にどう過ごしてもらうか。が勝負です。言うなれば、施設に来てもらえればこっちのもの。その来てもらうまではサウナや温浴の基本。来た後の努力は、導線や秩序をまもること。なんです」
- 吉田支配人 「休憩スペースにミストが降る「mist max」ボタンと、上から風が吹いてくる風の滝。この2つで休憩スペースの居心地がよくなったでしょ?あれでアカスリの実績が伸びたんですよ。すぐ隣がアカスリスペースだから」
ニューウイングに来たら、2階から3階に上がる階段をよく見てほしい
- 吉田支配人 「階段です」
- 吉田支配人 「はい。階段です。それも、2階から3階に上がる階段。そこをよく見てください」
- 吉田支配人 「そうです。その階段はうちにとってとても重要です。2階の温浴フロアは、この施設に来た人は全員行きます。まぁ、サウナとお風呂に入りに来ているわけですからね。ただその上のレストランフロア。ここまでお客さんを上げなければならない。飲食してくれないとうちの客単価は上がらないですからね」
- 吉田支配人 「いかに2階のお客さんを3階に上げるか。その秘密が階段に隠されています。ポイントは「色」「明るさ」「感触」です」
- 吉田支配人 「まず、ニューウイングの階段の色は濃い青です。ですが、2階から3階に上がる階段だけ赤色なんです。そして、そこの階段だけ照明をかなり明るくしてあります。極め付きは感触。あの階段だけ、ちょっと毛羽立ったもこもこした感触にしているんですよ」
- 吉田支配人 「そうやって、『お、他の雰囲気とちょっと違うな』と思うと上がってみたくなるでしょ?その階段の途中に、レストランのメニューを貼っておく。そして3階に上がると、ちょっとなにか食べたいな、飲みたいなと思うわけです」
- 吉田支配人 「そうやってひととおり食事をしたら休みたくなる。そうしたら4階へ。ちょっと休憩するとゲームがしたくなる。そうしたら5階へ。遊び過ぎたら眠たくなる。そうしたらカプセルへ。そうやってゆっくりしてもらうんです」
- 吉田支配人 「そうです。気をつけてください。うちの施設は罠だらけですよw」
常に進化を緩めず、革新的なアイデアで、サウナ界に一石投じる名支配人「吉田支配人」。そんなトップマネジャーが運営する 錦糸町ニューウイング の、あの独特の居心地の良さは、実はとても緻密で大胆な戦略があって成せるものだった。とりあえず、次に ニューウイング に来た時は、2階から3階に上がる階段を注意深く見て欲しい。そこに、吉田支配人が仕掛けた、3階にいざなう罠が待っている。