モンゴルとサウナ
海外のサウナ。そう聞くとまっさきに思い浮かぶ国はフィンランドだろう。
リトアニア、ラトビア、エストニア、ノルウェーなどの北欧地域が有名で、それからドイツ、イタリア、オランダなどの欧州もある。
しかし、実は隠れたサウナの名国として「モンゴル」が挙げられるのを知っているだろうか。
モンゴルならではの文化、風土、そして世界観。これらが絶妙にサウナにマッチしていて、日本では味わうことのできないととのいを楽しめるのだ。
今回は、実際にモンゴルに赴き、現地のサウナを取材した。モンゴルのサウナの魅力をぜひのぞいてみてほしい。
モンゴルってこんな国
大草原と遊牧民。移動式円形住居ゲル。馬と羊とチンギス・ハーン。最近話題になったドラマ「VIVANT」のロケ地。
みなさんはモンゴルにどんなイメージを持っているだろうか。
日本からたったの5時間のフライトで行くことができる、アジアの近しい国。それでいてあまり馴染みがなく、漠然としたイメージしかない。そう感じてはいないだろうか。

モンゴルは日本の約4倍の面積を持ちながら、人口は静岡県と同じくらい。首都ウランバートルにはモンゴルの全人口の約半数が住んでおり、ゆえに日本の新宿や渋谷のように賑やかで元気。グルメや街遊びも存分に楽しめる。

しかし、そこから1時間ほど車で走れば、イメージした通りのモンゴルが広がっている。大草原を自由に闊歩する馬、牛、羊。ゲルという移動式住居がそこかしこに点在し、地球と動物と自然、それと一体化した遊牧民の生活がある。
モンゴルに行ったら、ぜひ遊牧民の生活を体験してほしい。

モンゴルサウナのド定番!ソヨル ウェルネスセンター
日本の成田空港から約5時間のフライトで、モンゴル「チンギス・ハーン国際空港」に到着。そこから車で1時間ほどで、首都ウランバートルの中心地に。
最初のサウナは、モンゴルサウナのド定番、ソヨル ウェルネスセンターへ。「モンゴルでおすすめのサウナはありますか?」と現地の人に聞くと、必ずと言っていいほどソヨル ウェルネスセンターが出てくる。まさに国を代表する超名店だ。
なお、今回の記事では5つのサウナを紹介するが、日本のサウナに慣れた旅人がモンゴルのサウナに馴染むための「難易度」を、サウナタイムの独断で星5段階評価で表している。難易度が低いほど、日本のサウナと変わらない楽しみ方ができ、難易度が高いほど、モンゴル独自のローカル感や雰囲気が味わえると思ってほしい。
ソヨル ウェルネスセンター 難易度:★★☆☆☆

ソヨル ウェルネスセンターは、まるで宮殿のような華美さと荘厳さがあり、施設内のレストラン、リラクゼーションスペースなど全ての設備が清潔でラグジュアリー。体も心も満たされる、そんな特別感のある大型施設だ。旅の疲れを一気に癒してくれる、モンゴルに行ったら絶対行くべきサウナ。
日本だと、
テルマー湯西麻布
がイメージに近い。

これぞモンゴルの都市型サウナ!エンカントサウナ
続いてのサウナは、同じくウランバートル市内にあるエンカントサウナ。
Encanto sports complexという施設内にあるサウナで、省スペースにサウナ、水風呂、浴室、スチーム、さらにはボディケアやリラクゼーションスペースなどをまとめた、まさに都市と生きるサウナ。
日本でいうと、
スカイスパYOKOHAMA
にイメージが近いかもしれない。
導線もスムーズで、サウナと水風呂もちょうど馴染みにある温度と湿度。海外のサウナでありながらも、なんだかとても落ち着くととのいを提供してくれる。
エンカントサウナ 難易度:★☆☆☆☆

まさにモンゴルのローカルサウナ!ゴビサウナ
ウランバートルの中心地から少し離れたところにあるサウナ。先ほど紹介したソヨル、エンカント、そしてゴビサウナ。これがウランバートル3大サウナと言われている。
ゴビサウナは、ソヨル ウェルネスセンターと同じく、レストラン、リラクゼーション、岩盤浴など設備が充実した大型施設。しかし、華美でラグジュアリーなソヨルとはちょっと雰囲気が違う……。

なんというか……、屈強なローカル感があり、サウナはガンガンに激アツ、水風呂はキンキンのシングル手前。地元のおじちゃんがゴンゴンにセルフロウリュをしてくる。
言葉は通じないが、サウナの熱さはみんな一緒。地元のおじちゃんとロウリュを通してゲラゲラ笑い合い、顔をしかめながらキンキンの水風呂に沈む、そんな一体感を楽しめる。
日本だと、
サウナ北欧
がイメージに近いかもしれない。
ゴビサウナ 難易度:★★★☆☆

都心から草原リゾートへ!ジュルチン テレルジ リゾート
首都ウランバートルから車で1時間ほど。都心を離れ広大な自然が迎えるテレルジ国立公園へ。
テレルジ国立公園は、モンゴルの歴史と自然を楽しめる場所。まずは、モンゴルを象徴する偉人、チンギス・ハーンの巨大な騎馬像がお出迎え。

そこから少し車を走らせ、標高2000mを超える山々や広い草原、雄大な亀岩に囲まれた中に、ラグジュアリーリゾートホテル「ジュルチン テレルジ リゾート」がある。大きな本館と、複数のゲルからなるこのホテルは、快適で現代的なゲル生活を堪能できる。

館内のサウナは、広く明るく快適なサウナ。眺めのいい浴室と、

対話が楽しめる間取りの、清潔で明るいサウナ。

サウナからあがれば、快適なゲル生活を。雄大な自然の中にいても、完備された住居設備が安心で安全なモンゴル旅を盛り上げてくれる。
サウナ→水風呂→外気浴、食事をしたらそのまま睡眠。ホテルサウナの醍醐味。日本でいうと、
舞浜ユーラシア
のような満足感。
ジュルチン テレルジ リゾート 難易度:★☆☆☆☆
楽しいスポットがたくさん!魅力のモンゴル旅
最後のサウナを紹介する前に、せっかくなので、モンゴルのお楽しみスポットを紹介。
ウランバートルは、グルメ、ショッピングはもちろん、歴史的建造物からナイトスポットまで、旅の楽しさを凝縮したコンパクトシティ。
この街を一望し、モンゴルの歴史を体感するなら、まずはザイサントルゴイという展望台まで。
展望台からの眺めもいいが、なによりモンゴルとロシアの歴史を壁画から感じることができる。

より深く歴史を堪能するなら、ウランバートルを代表する歴史的建造物、チベット仏教寺院「カンダン寺」へ。寺院の中にある観音菩薩は圧巻。

モンゴルがロケ地となった、人気を博したドラマ「VIVANT」でもたびたび出てきたスフバートル広場。
政府宮殿、モンゴル国立オペラ劇場などの間にある、国民憩いの広場。

広場を見守る、鎮座するチンギス・ハーン。

より迫力のあるチンギス・ハーンが見たければ、テレルジにあるチンギス・ハーン騎馬像へ。

チンギス・ハーン騎馬像の麓では、弓矢体験ができたり、

大鷲と戯れることもでき、

なんとラクダにも乗ることができる。

夜になるとウランバートルのテーマパーク、ナショナルアミューズメントパークへ。
ここはなんと入場料無料。お馴染みのコーヒーカップからメリーゴーラウンド、さらにはジェットコースターやフリーフォールもある。

夜のウランバートルはまだまだ元気。日付が変わってもバーやナイトクラブは営業しており、元気な若者がモンゴルの経済を支えている。

This is MONGOL!Batsumber村の草原サウナ
モンゴルのサウナ旅も大詰め。ここで絶対に日本では体験できないモンゴルならではのサウナを紹介したい。
まずはモンゴルでは非常にレアな移動手段、鉄道を使う。モンゴルは鉄道網があまり発達しておらず、北はロシア、南は中国との国境を結ぶ「モンゴル縦貫鉄道」がある。
趣きを感じるウランバートル駅へ。

ウランバートルから1時間、流れる景色を楽しみながら、ダワーニ駅まで。車窓の景色が徐々に都会から草原へと変貌していく。
ダワーニ駅からさらに車で1時間ほど。イメージした通りの大草原が現れる。

その大草原の小さな村、Batsumber村へ。村に着くと、遊牧民のファミリーが馬乳酒で歓迎してくれる。

そのまま、本日泊まるゲルへ。電気も空調もシャワーもwifi環境も、そんなものはなにもない。

ゲル内はとてもシンプル。

街灯も道路も何もない。馬と牛と羊と草原しかない、そんな川のほとりに、一台のサウナカーを停める。

サウナが何℃かはわからない。湿度も対流もわからない。ただ、熱く気持ちいい空間がそこにある。

クールダウンは川の水を使う。水の温度は自然が決める。

太陽があればサウナに入り、暗くなればゲルに戻って焚き火を囲む。
ここのサウナはスペックじゃない。気持ちいいという価値だけ。草原の風と川のせせらぎと動物の足音と鳴き声を聴きながら感じる外気浴は、ここでしか味わえない最高のととのい体験だった。
Batsumber村サウナ 難易度:★★★★★

この20年あまりで10倍の経済成長を遂げたモンゴル。急激な近代化が進み、街は活気に溢れ、元気な国民が人生を謳歌するように経済を回している。
そのすぐそばで、何年も変わらない遊牧民と家畜の生活があり、伝統と革新が手を取り合うように同居している。
ぼくたち日本人がモンゴルに行くと、少し忘れかけていた、元気でやんちゃな子供心、先人を敬う気持ち、違う考えを受け入れる寛容さ、自然への畏怖と尊敬、そういったものを思い出させてくれる。
日本からたった5時間。これは東京から名古屋まで車で行ける大体の時間。モンゴルはこんなにも近い国なので、次のサウナ遠征は、思い切ってモンゴルまで行ってみては?
協力
ツアーコンダクター
日本旅行
:鈴木純也
シン・サウナ
著者:川田直樹(カワちゃん)
現地ガイド
Byambatsogt Bayanmongol